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カロリーナ・ラケル・アンティッチ
「夕暮れ」


 カロリーナ・ラケル・アンティッチは1970年アルゼンチンのロザリオ生まれ。1990年代後半にイタリアへ移り、現在はヴェニスを生活の拠点としながらペインティングを中心とする制作活動を行なっています。2005年にItalian Youth Art Prizeを受賞し第51回ヴェニスビエンナーレに出展した彼女は、以降発表の場も国際的に広まり、近年ニューヨーク、ロンドン、ルガーノでの個展、2008年ローマ・クアドリエンナーレへの出展などを果たしています。


 アンティッチの作品には、主題として思春期前の幼い子供たちの姿が多く登場します。戦争ごっこに興じる細身の少年たち、自我の目覚めを感じさせる表情をたたえた女の子のポートレート。アンティッチの作品には、子供の持つ純真さや初々しさだけでなく、意固地さや残酷性といった多面的で移ろいやすい感情の揺らめきが繊細なタッチで捉えられています。


 前回2007年にArt-U roomで開催した個展「日の出を越えて」では、淡い色彩を基調とした透明感に満ちた作品が中心となりましたが、今回の個展「夕暮れ」出展作品では、よりヴィヴィッドな色彩の中、子供たちはまるで夢で見られたシーンであるかのような幻想的な風景の中に佇んでいます。夜の訪れと共に姿を現す様々な幻影たち。アンティッチの心の奥底から湧き上がったイマジネーション溢れるイメージの数々をお楽しみ下さい。



●  会 期: 2009年11月27日(金)〜 12月20日(日)

●  レセプション:11月27日(金)18:00-20:30

●  協 力:Florence Lynch Gallery, New York


[プレスリリース(PDF)]


カロリーナ・ラケル・アンティッチ ウェブサイト

 

夕暮れ

夜の帳が降りる。だが、たそがれ時は奇妙な燐光を辺りに漂わせる。カロリーナ・アンティッチの最新作では、絵画の物質性、すなわち絵の具の立体感や明暗の対比、それに色彩の揺らぎといったものに直ちに注意を引き寄せられる。彼女の以前の作品に見られた希薄さ、ほとんど消え入るまでに虚ろで、控えめに仄めかされた情景は微妙に捉え直され、絵画の論理が命ずるままに重ね塗りと上塗りが優先された結果、形態の探求から生じた痕跡は、誤謬をも認めうる不安定な形象を浮かび上がらせている。幻影の様に画面に侵入したこれらの形象は、別の世界から現れた物でもあり、また何か破滅的な出来事の傷跡の様にも見える。夜中に捕えられた小動物。あるいは呪われた光を放つ人影。描かれているのは常に子供たちであり、彼らは深く集中した様子で自分たちの発見に酔いしれている。彼らは奇妙な距離を保ちながら生きており、隠れ家からそっと我々を見守りながら自分たちの秘密を暗に仄めかしている。しかし彼らの冷たくよそよそしい視線に共犯関係を求めても無駄である。木の陰に隠れた子供が目を大きく見開きこちらを見詰めている。その子は怖がっている様子はないが、あらゆる気配にじっと注意を傾けている。こちらでは、まばゆいばかりに色白のブロンドの髪をした名の無い少女が、夜の森の枝葉に撫でられながら立っている。またあちらでは、漠然とした夢のような風景の中で、子供たちの一団が光りに浸された池で泳いでいる。ここでもまた、鮮やかな明暗の対比が見出される。完全な暗がりに沈んだ前景に立つ木の形は、森と隠れ家を探す視線という主題を再び取り上げている −但し今回は、暗がりの中から覗き見る立場にあるのは鑑賞者であるという違いがあるにしても。この隠蔽と意図された距離というゲームにおいて、アンティッチはもはやおとぎ話の世界を描いているのではない。それは一種の冷淡さ、無関心さから来るものではなく、あらゆるものを極限まで暴き出すという条件に由来する内省の冷徹さを呼び起こしているのである。

フランシスコ・ロッカ

カロリーナ・ラケル・アンティッチ「夕暮れ」

Carolina Raquel Antich: Nightfall

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展示風景