PINAREE SANPITAK
ピナリー・サンピタック
ピナリー・サンピタック「紙の痕跡と空飛ぶ立方体」
ピナリー・サンピタックの作品は、これまで「女性の身体性」を軸としながら、二十年以上にわたり緩やかに重層的な展開を遂げてきました。彼女の代表的なモチーフである「乳房」のかたちは、時に仏塔や、器、小舟、雲へと姿を転じながら見る者の想像力を掻き立てる豊饒な表象世界を形成し、また技法の面でも、キャンバス上の絵画からテキスタイルや陶器、鋳物、ガラスを用いた立体作品およびインスタレーション、更には料理を媒介とする恊働型プロジェクトに至るまで幅広いメディアを通して、異なる知覚対象を相関的に扱いながら常に我々の根源的な身体感覚に訴えかける多彩な創作活動が行なわれてきました。
今回の個展「紙の痕跡と空飛ぶ立方体」は、新作ドローイング連作と、籐で編まれた彫刻の2つの要素で構成されます。本展に際しサンピタックは次の様に述べています。《これらのドローイングは、私の内面や、あるいは周囲の状況が落ち着かない時間に描かれました。私はこれらの作品に静かに心を傾けながら、できるだけ意味を成すものにしようと努めました。私はまだ、あらゆることを完全に理解するには至っていませんが、それでもこれらの作品は、少なくとも私を再びこの場に根付かせてくれるのに役立ち、また、それこそが私にできる最善の賭けなのかもしれません。》
この点ドローイングという手法は、彼女にとってその時々の微妙な感情の起伏を紙の上に写し取った最も親密な表現形式と言えるかもしれません。また、翼の生えた不思議な形状を持つ籐の彫刻は、以前彼女が東京を訪れた際に、ある料理店で見掛けた折り紙のかたちが出発点となっており、サンピタックらしい大らかなユーモアを兼ね備えた表現となっています。
ピナリー・サンピタックのArt-U roomでの4年振りの個展となる今回の展覧会。皆さまのお越しを心よりお待ちしています。
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会 期: 2010年11月19日 [金] 〜 12月12日 [日]
火 - 土 12:00-19:00 日 12:00-17:00 / 月休、11月23日 [火・祝] は開廊
■ オープニングレセプション:11月19日 [金] 18:30-20:30
[ プレスリリース(PDF) ]
JP / ENG
Works
2010年、籐編み、L.140xW.50xH.60cm / 編み細工:ウィラット・スリヴィチャイ
2010年、籐編み、L.140xW.50xH.60cm / 編み細工:ウィラット・スリヴィチャイ
2010年、籐編み、L.140xW.50xH.60cm / 編み細工:ウィラット・スリヴィチャイ
2010年、籐編み、L.140xW.50xH.60cm / 編み細工:ウィラット・スリヴィチャイ
2010年、籐編み、L.140xW.50xH.60cm / 編み細工:ウィラット・スリヴィチャイ
2010年、鉛筆・紙、56x56cm
2010年、鉛筆・紙、56x56cm
2010年、鉛筆・紙、56x56cm
2010年、鉛筆・紙、56x56cm
2010年、水彩・鉛筆・紙、56x56cm
2010年、コラージュ・水彩・鉛筆・アクリル・紙、56x56cm
2010年、コラージュ・水彩・鉛筆・アクリル・紙、56x56cm
2009年、水彩・アクリル・羊皮紙、 50x70cm
2009年、水彩・アクリル・羊皮紙、50x70cm
2009-2010年、水彩・鉛筆・アクリル・紙、41x64.5cm
2009-2010年、水彩・鉛筆・紙、41x64.5cm
2010年、水彩・アクリル・色紙、24x27cm
2010年、水彩・アクリル・色紙、24x27cm
2009年、水彩・アクリル・色紙、24x27cm
2009年、アクリル・色紙、24x27cm
2010年、アクリル・色紙、24x27cm
展覧会に寄せて
ピナリー・サンピタック
私はこれまで、実体のあるものや無いもの、様々な痕跡を残してきました。それらは互いに繋がり合い、成長し続けています。私がこうした行為を続けている理由は、これらの痕跡がある印象を残すと信じているからです。そして具体的であれ抽象的であれ、何らかの違いをもたらすと信じているからです。
これらの作品は、私の内面や、あるいは周囲の状況が落ち着かない時間に描かれました。私はこれらの作品に静かに心を傾けながら、できるだけ意味を成すものにしようと努めました。私はまだ、あらゆることを完全に理解するには至っていませんが、それでもこれらの作品は、少なくとも私を再びこの場に根付かせてくれるのに役立ち、また、それこそが私にできる最善の賭けなのかもしれません。
数年前私は、私が今「空飛ぶ立方体」と呼んでいる翼の生えた四角い折り紙の形に興味をそそられました。それらの折り紙は、東京のとある料理店のカウンターに置かれていて、店の主人が私と私の息子に一つずつお土産として手渡してくれたのです。ただ1枚の紙を折っただけのその形には、見たり感じたりすることが沢山含まれている様に思われました。そしてついに私は、これらの立方体を再び空に解き放つことができたのです。
私が費やし、分かち合い、そしてまだ希望で満ちたものと感じられるひと時。